AI の概要と社会への応用について

AI-catch AI



これから AI (Artificial Intelligence,人工知能)についての記事を書いていきますが,当該記事はそれの表紙的な役割で,AI の定義や概要,社会への応用について簡単に紹介しようと思います.

AI の定義

「人類最後の発明」と言われている AI は,一例としてはクレジットカードの不正使用検知などに利用されており,今や我々の暮らしに欠かせない技術です.
そんな AI の定義について,例えば総務省の Society 5.0 に関する web ページでは,

「AI」とは,人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム,あるいは人間が知的と感じる情報処理/技術といった広い概念で理解されている.

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd113210.html

というように厳密には定義がないとされています.
上記引用によれば,「知的」と感じるようなシステムであれば AI と言っても良い,と解釈でき,緻密に組まれた条件分岐などによる制御システムでも AI と呼称されることも良くあります.
(モノ・コトによっては,「機械学習も使っていないようなこんな仕組みじゃ AI と呼ぶにはふさわしくない」と思われるケースもありますが,定義が決まっていないので,寛大な心で受け止めましょう.)

AI/機械学習/深層学習の関係

広義の意味としての AI の種類は,

  • 人が決めたルールベース(数理最適化含む)による制御(主に条件分岐)であるエキスパートシステム
  • データドリブンな(計算機がルールをデータから自ら学習する)手法である機械学習

の二つに大きく分けられます.
計算機の処理速度の向上に伴い,近年発展を遂げているのは後者の機械学習で,その中でも計算負荷が非常に大きい深層学習Deep Learning)は,その汎用性の高さ = 設計の自由度と表現力の高さから2000年代後半より急速に発展しており,2022/08 現在では特に stable diffusion などの画像生成系や,GPT-3 などの言語モデルなどキャッチーでバズっているものも多く,多様な進化を遂げています.

ベン図を描くと,AI ⊃ 機械学習 ⊃ 深層学習 というようになっており,経産省では以下のような画像が説明とともに掲載されています.

ml_dl
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/image/n1302010.png

説明のみ以下に書き出します.

  • 人工知能(AI: Artificial Intelligence)・・・・人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム全体.あるいは,人間が知的と感じる情報処理/技術全般.
  • 機械学習(ML: Machine Learning)・・・・AI のうち,人間の「学習」に相当する仕組みをコンピューターなどで実現するもの.入力されたデータからパターン/ルールを発見し,新たなデータに当てはめることで,その新たなデータに関する識別や予測などが可能.
  • 深層学習(DL: Deep Learning)・・・・機械学習のうち,多数の層からなるニューラルネットワーク(4層以上と言われている)を用いるもの.パターン/ルールを発見する上で何に着目するか(「特徴量」)を自ら抽出することが可能.

定義では,深層学習は機械学習に含まれますが,文脈によっては,「機械学習」と呼称される対象が深層学習を含まない決定木や SVM などだけを指す(深層学習でない機械学習を示す)こともあります.
加えて,「深層学習」よりも「Deep Learning」という表記の方が多く見られます.

注意として,一般論では「他の機械学習と違って,深層学習は自身で特徴量を抽出することが可能であるから,正規化などの前処理は要らない」といった内容も目にすることがありますが,前処理によってデータのレンジを調整しないと学習が上手くいかないこともあるので,「とりあえずデータを食わせれば良い」というは認識は不適です(深層学習の記事で実例を示せれば良いですね).

AI に対するイメージと実際

一般に言う AI のイメージは,高度な知性を持ち,かつ,個々に意識を持ち独立した,人間と変わらないようなものを想像される方が多いと思われます.
具体例をあげると,例えば映画で言えば 少々古いですがウィル・スミス主演の I Robot に出てくるロボットであったり,アニメだと攻殻機動隊に出てくる多脚戦車やその他の一般ロボのようなものでしょうか.

しかし,少しでも AI の社会実装について目にしたことのある方は,”自意識を持つ AI” は実現できてはいないことや,別にロボットなどのハードウェアを持たなくても,システムにおける手段自体を AI と呼ぶこともある,ということもご存知かと思われます.(一方で,Google の LaMDA に「自意識が芽生えた」と言ったエンジニアが守秘義務違反で解雇されましたが,それは自意識と本当に言えるのかどうかとか,真相はどうなんでしょう.)

上記のように,AI の考え方については以下2種類あり,現状,実社会に実装/活躍しているのは特化型人工知能です.

  • 汎用人工知能(強い AI)・・・・人間と同等以上の自意識や知性を持ち,自身で思考することが出来る.いわゆる人工知能.
  • 特化型人工知能(弱い AI)・・・・ある特定のタスクで知性を示し,問題解決や推論を行うことが出来るように実装されたソフトウェアや機械.

特化型人工知能については,近年の計算機の発展に伴う深層学習関連の発展によって,目覚ましい進化を遂げています.
一方で,もちろん,汎用人工知能についても研究が行われており,日本にも多くの研究チーム(汎用人工知能研究会人工知能先端研究センター など)がありますので,今後の発展が楽しみですね.
「汎用人工知能の実現は不可能」と深層学習の世界的権威である Yann LuCan 氏は仰っているそうですが,個人的には AI の発展について夢を持ちたいです.

機械学習と教師データの関係

機械学習は直接アルゴリズムをプログラミングするのではなく,機械学習モデルが入力データからパターンやルールを学習するため,データドリブンな手法と言われます.

例えば,犬と猫どちらかで分類分けされた画像が数千枚ずつあるデータセットについて,画像から犬か猫のどちらかを判別するような AI を学習によって獲得するとします.
このとき,入力データとなる画像を「説明変数」,出力データの答えとなる犬か猫かという情報を「目的変数」,この答えの正解となる出力データを「教師データ」,または,「教師ラベル」と呼びます.

supervised-learning

AI の学習において,問題によっては教師データが無いものもあり,教師データのある/なしによっても,機械学習は分類されます.

  • 教師あり学習(Semi-Supervised Learning)・・・・正解となる教師ラベルのある学習.文字や画像などのクラス分類や,連続値を予測する回帰.例:画像から犬か猫の分類,住宅価格予測の回帰など.
  • 教師なし学習(Unsupervised Learning)・・・・教師ラベルを用いない学習.クラスタリングによるグループ化.例:猫の画像だけ学習させて猫かそれ以外かを判定.
  • 半教師あり学習(Semi-Supervised Learning)・・・・学習データの一部に教師ラベルがある学習.教師ありと教師なしの間を取ったような学習.例:ラベル付けするのが困難な大規模なデータセットの学習.
  • 強化学習・・・・環境と呼ばれる空間の中で複数回試行錯誤を行い,報酬を与えることにより学習が進んでいく手法.例:ゲーム AI,最適化.

AI の社会実装例

冒頭記載しました通り,AI の一般社会や工学への応用範囲は広く,例えばカメラによる来場者数カウントやネット販売の需要予測など多岐にわたり,思いつくままに以下に書き出してみました.

応用例参考 web サイト
顔検出https://plus-sensing.omron.co.jp/technology/detail/index.html
画像検査https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visual-inspection/method/sensor.jsp
表情の定量化https://www.kaonavi.jp/
画風変換https://tech.preferred.jp/ja/blog/chainer-gogh/
画像生成https://gigazine.net/news/20220902-stable-diffusion-clip-retrieval/
スマホやスマートスピーカーなどの音声認識https://assistant.google.com/intl/ja_jp/platforms/speakers/
ロボット制御https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/iot-boston-dynamics/
機械の異常検知・故障予知https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100939.html
農業https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visual-inspection/method/sensor.jsp
漁業https://aihayabusa.co.jp/ai-f_industry/
医療https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20220525.html
土木https://ledge.ai/ixs-road-ai-analysis-service/
AI 面接サービスhttps://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202004/ai-shain/
株価予測https://kyodonewsprwire.jp/release/202105104653
機械翻訳https://translate.google.com/intl/ja/about/
自動運転https://www.tesla.com/jp/autopilot
ゲーム AIhttps://yaneuraou.yaneu.com/2022/06/27/nobody-could-compete-with-dlshogi-anymore/
バーチャルエージェントhttps://www.ibm.com/jp-ja/products/watson-assistant
バーチャルヒューマンhttps://www.youtube.com/watch?v=_AtugiWf420
デジタルクローンhttps://alt.ai/pai/

キリがないので,このくらいにしておこうと思います.

機械学習関連の記事作成予定

機械学習には色々な種類がありますが,初歩的なものから深層学習へと順番に,以下のように記事作成を進めていこうと考えています(後日,加筆修正あり).

  • 線形回帰
  • Lasso 回帰
  • Ridge 回帰
  • SGD; Stochastic Gradient Descent
  • 決定木
  • SVM; Support Vector Machine
  • ブースティング
  • 勾配ブースティング
  • クラスタリング
  • 単純パーセプトロン/人工ニューラルネットワーク
  • 深層学習関連

上記について,理論や図や数式とともにコード実装について解説していく予定です.
ライブラリとしては,scikit-learn, xgboost, lightgbm, catboost, tensorflow, pytorch, jax/flax/optax あたりを使用予定です.
また,データ分割やアンサンブル,統計学などについても,随時肉付けしていきます.

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